PROJECT STORY

#02

『ガルパ』が教えてくれたこと 会社設立からリリースまで

『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、ガルパ)は、Craft Eggが開発し、ブシロードと共同企画・配信・運営を行うスマートフォン向けゲーム。2020年4月にはユーザー数が1200万人を突破し、今では多くのユーザーに愛される『ガルパ』だが、その誕生までの道のりには数々の困難があった。

MEMBER

4度目の正直!?

『ガルパ』はCraft Eggとして4本目のタイトルでしたね。どのようにして開発することが決まったのでしょうか?

森川

『ガルパ』の開発を開始したのは、2015年末でした。それまでにリリースした3タイトルは全く結果が出せなかったので、この状態でもう1本リリースするべきなのか、あるいは会社をたたむべきなのか、かなり多くの時間を使って議論しました。

村上

正直なところ、当時私は本当にこれを最後の勝負としてやるべきなのかという不安も感じていました。

森川

(笑)。
でも、最終的には「やる」決意をしました。
それまでに『バンドリ!』(※)プロジェクトの一環である声優ユニットのリアルライブや練習などに立ち会う中で、キャストやスタッフのみなさん、お客さまのものすごい熱量を感じていたのが大きかったですね。『バンドリ!』というコンテンツを成功させるためならもう一度がむしゃらにやれると思いました。

村上

森川がやる決意をしたからには私も成功させようと腹をくくりました。

(※)バンドリ!(BanG Dream!):アニメ、コミック、声優によるリアルライブ、さらにCraft Eggが開発したゲームなど、様々なメディアミックスを展開する次世代ガールズバンドプロジェクト

「ユーザーファースト」を「みんなでつくる」。

4度目の挑戦を成功させるために、新しく取り組んだことや意識したことはありますか?

村上

最初の2カ月間は、「どうしたらヒットするか?」をとことん話しました。その中で出てきた考え方が、今Craft Eggが大切にする9つの価値観「YOLK」の一つにもなっている「ユーザーファースト」です。

私もプレイヤーとして様々なゲームを遊びますが、やっぱり純粋に遊ぶ人たちの事を考えてくれているゲームで遊びたいです。逆に運営の都合で不都合を押し付けてくるようなゲームは遊びたくありません。私たちはお客さまにとって“いい体験”を届けたいし、そうしないとお客さまに継続的に遊んでもらえるゲームにはならないよねと話し合って、とことんユーザー目線を大事にすることにしました。

森川

それまではプロデューサーが全てを決めるトップダウンのスタイルで、これならヒットするはずと信じてやってきた結果、惨敗しているので、さすがに同じやり方じゃダメだよね、と。

『一人一人が、お客さまのことを第一に考える』。それを実現できるように、上下関係やセクション関係なく社員みんながプロダクトに対して意見を言い合える環境にしなければならないと考えるようになりました。

「みんなでつくる」文化の始まりでしたね。

手応えを感じた東京ゲームショウ。

「形になってきた」と感じたタイミングはいつ頃だったのでしょうか。

森川

『ガルパ』のお披露目は2016年9月に開催される『東京ゲームショウ』と決まっていたのですが、6月になっても、『見せるもの』がほとんど出来ていないという状態でした。リズムゲームのベースはあったけれど、演出の仕方などについてはまだ何も決まっていなくて。それに、Live2Dで動くキャラクターが全然魅力的じゃなかった。

村上

みんな焦ってましたね。
でも、ちょうどそのタイミングでLive2Dに精通したメンバーがプロジェクトに加わってくれて、Live2Dやモーションなどをつくり変えることになり一気に開発が加速しました。

森川

それで、ようやく自分たちがつくり上げたキャラクターデザインやLive2Dのアニメーションに自信を持てたので、「東京ゲームショウでアンケートを実施し、5段階評価で平均4.3以上の評価を目指そう!」と社内では目標を掲げていました。結果、アンケートの評価は平均4.5。自信はあったけれど、ホッとしましたね。

みんなの熱量を結集し、いよいよリリースへ。

東京ゲームショウからリリースまでの期間で高いクオリティに仕上げるのは大変だった
のではないでしょうか?

村上

東京ゲームショウを乗り越えた後も、苦しい時期は続きました。
ゲームとして形になるまでは進んでいる実感も持ちにくく、人員的にもスケジュール的にもかなり厳しい状況でした。それでも前に進むしかないので、優先順位をつけて取捨選択をしながら進めていましたが、日増しにチーム全体の疲労の色が強くなっていきました。

森川

あの時期は本当に大変でしたね。
でも、ゲームが出来上がってきて少しずつ社内全体に明るい空気が出てきて。みんなが『バンドリ!』というプロジェクトを好きになって、最大限お客さまにとっていいものを届けたいと思ってくれていることが伝わってきました。

そしてアニメ「バンドリ!」8話放送翌日の2017年3月16日、無事にリリースすることができました。リリース直後のダウンロード数やランキングを見ると、自分たちが想像していなかったような結果で……。まさかこんなにヒットするわけがないと最初は疑ったくらいです(笑)。

村上

リリースしてから一週間以上たってようやく実感できました。
ただ、リリース後も想定以上のお客さまが来てくださったため協力ライブがなかなかできない状態になったり、リリース直後はなかなか魅力が伝わらないキャラクターもいたりしました。

森川

半年くらいでしょうか、ストーリーを展開していくうちに、だんだんキャラクターたちがお客さまに愛されるようになって、キャラクターやバンドへの応援、運営への温かい言葉がたくさん寄せられるようになりました。あの時は嬉しかったですね。
4年目となった今もたくさんのお客さまに『ガルパ』と、そのキャラクターたちを愛してもらっていて、本当に有難い限りです。

これまでと、これからと。

最後に、『ガルパ』のリリースから3年を経た今のお気持ちや、現在の開発チームについ
てお聞かせください。

村上

キャラクターが成長していくのと同じように、私たちも『ガルパ』を通して成長させてもらいました。私は『ガルパ』をリリースしてから、『会社とは何なのか』や『触れてくださる人たちの人生』、『提供している私たちの人生』について深く考えるようになりました。一緒に働いている仲間たちにも会社の考えを押し付けるのではなく、自らの意志でそれがいいと思ってもらえるように接するよう心がけています。

森川

「ユーザーファーストであることが成果につながる」ということは、リリース前から口では言っていましたが本当の意味で理解できたのは『ガルパ』リリース後でしたし、1周年、2周年、そして3周年と運営を続ける中でそれが確信に変わってきました。

運営を続ける中でお客さまから優しいお言葉も厳しいお言葉もたくさんいただきますが、その一つ一つに真摯に向き合おうとし続けることで、お客さまと良い関係を築くことができ、その結果として今でも多くの方に愛され、応援されているという事が、我々が「ユーザーファースト」を信じ、掲げ続ける理由になっています。

今ではプロジェクトの現場に入ることは少なくなっていますが、新規のタイトルも含めて、プロデューサーをはじめ各プロジェクトのメンバーたちの中で、「お客さまにどういう体験を届けるべきか」という議論が自然に発生しているのは、この会社の文化として浸透しているのだなと感じます。

『ガルパ』で生まれた自信をもって、新しいタイトルをお客さまに届けていきたいですね。